ワークライフバランスの代表的な取り組みと転職者を防ぐ具体的な方法

平成19年に厚生労働省が「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和促進のための行動指針」を策定し、平成22年に改定しました。

ワークライフバランスについて具体的な内容と導入例、退職者を防ぐための取り組みを紹介します。

 

目次

ワークライフバランスとは

ワークライフバランスとは、厚生労働省が推進している仕事と実生活の両立をし、心身共により健康的で充実した生活を送るための指針です。

 

 

働き方改革の一環として、国全体の課題として大きく取り上げられています。

また企業側はワークライフバランスの取り組みを自社で取り組むことで、国や社会からの評価を得やすくなり、注目を集めることができるようになりました。

 

ワークライフバランスの取り組みを導入することによって、社員の退職を防ぐことにも繋がります。

 

ワークライフバランスの取り組みを導入している企業

かと言って、国から具体的な制度を強制的に企業に与えているわけではないので、今いちピンと来ないという方も多いと思います。

そこで、ワークライフバランスを積極的に導入して、成功している企業例をいくつか紹介します。

 

導入例1:サイボウズ

サイボウズはクラウドでの社内情報共有のツールのサービスを中心として展開している企業です。
一時期、離職率が28%までに上りましたが、ワークライフバランスの取り組みによって4%まで下がりました。

具体的に導入した代表的な制度を紹介します。

 

1介護・育児休暇制度

最長6年間の育児・介護の休暇制度です。育児や介護にかかる休暇が取得しやすくなる制度です。
(2006年〜)

 

2選択型人事制度

育児・介護だけではなく、通学や副業などの個人的な事情において、勤務時間や働き方を決めることができます。
会社が決めた、9つの働き方から選択するという形を取っています。
(2007年〜)

 

3育自分休暇制度

35歳以下を対象で、自分を成長させるために転職や留学などを理由に退職をする人に向けて、最長6年間は復帰が可能となる制度です。

 

4その他の制度

他にもワークライフバランスの取り組みとして、たくさんの制度を導入しています。
取り組みはサイボウズのホームページから確認できます。

 

導入例2:三井住友会場火災保険

三井住友会場火災保険はワークライフバランス向上に向け、「ゆとり創造取組」と「役割イノベーション」という2つのテーマで取り組んでいます。

三井住友会場火災保険の独自の制度を紹介します。

 

1遅刻特認

女性が妊娠中に通勤が負担になる場合、就業時間を変更することができる制度です。

特に朝の通勤ラッシュの時は妊婦とはいえ、なかなか優先席を譲ってもらえなかったり、席を変わること自体の動き自体が負担になることもあるので、通勤ラッシュを避けるような取り組みは女性にとってはありがたい制度です。

 

2ボランティア休暇

ボランティア休暇とは、ボランティア活動をする場合に、事前申告をすれば有給を利用するだけでは足りない日数分の「ボランティア休暇」が付与されるという仕組みとのことです。

また、社内で立ち上げたコミュニティとして「ゆにぞんスマイルクラブ」というボランティア団体があります。

こちらは社員が任意で寄付・寄贈活動や子どもの支援活動をするためのコミュニティです。

 

3その他の制度

他にもワークラフバランス向上のための制度をいくつか作っています。
詳しくは、こちらのPDFから確認できます。

 

他国でのワークライフバランスの取り組み

ワークライフバランスは日本で始まった取り組みではなく、世界で実施されている取り組みです。
他国ではどのようにワークライフバランスの取り組みを行なっているのか紹介します。

 

1スウェーデン

スウェーデンはライフワークバランスにおいては、最も進んでいる国です。
同国では、労働組合が力を持っている為に長時間労働に対して、とても厳しい目で見られています。

残業という概念がない上に、週平均33時間労働。これは週5日勤務とすると、1日6.6時間労働ということになます。
裁量労働や在宅勤務も一般的であり、その分、仕事の効率化を求められる文化とも言えます。

 

2イギリス

イギリスは2003年から「仕事と生活の調和キャンペーン」を発足しました。

代表的な取り組みとして、「集中労働日制」というものがあります。
これは、残業を減らすという取り組みとは逆の取り組みで、1日における労働時間を増やす代わりに出勤日数を減らすという制度です。

 

ワークライフバランス向上のメリット

このようなワークライフバランスを取り入れることによって、企業においてはメリットとデメリットが発生するので、デメリットをうまくカバーしながら制度を作りましょう。

 

1:社員の離職率が減り、会社に安定して定着しやすい

先ほどのサイボウズの例もありますが、ワークライフバランスを向上させることによって離職率が減ったという事例はたくさんあります。

会社の制度自体に魅力を感じて、転職してくる人もいるので、会社の魅力のひとつとして制度を取り入れると、それだけで他社にはないアピールポイントとなります。

 

2:生産性の向上

制度として残業を減らしたり、休暇を取らせることによって、従業員は今まで捌けていた業務を短い時間で処理しなければいけなくなります。

結果的に、従業員が自発的に効率化を測ったり、業務における新しいフローを考えなければいけなくなるため、会社全体としての生産性が向上します。

また社員に新しい発想が求められるため、主体性も引き出すことができます。

 

3:心身の健康

働き方改革の一環として、ストレスチェックやメンタルヘルスなどの国からの指針が発表されていますが、ワークライフバランスの向上において、従業員は心身の健康を維持することができます。

平成25年の独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査では、半数の企業はメンタルヘルスや私傷病において休職した従業員がいる企業は半数以上。

その内、復職率は平均51.9%とのことなので、この休職者の流れを止めたり、復職しやすい制度を導入するだけで定着率を上げることができます。

 

 

4:採用におけるコスト削減

退職者の流出を防ぐことは、同時に採用へのコストを削減することにも繋がります。

育成しても辞める社員が多いと、新しく採用した社員をはじめから教育しなければいけない為、採用におけるコスト削減の実施は、会社の成長においても長期的にみてOJTの工数削減にも繋がります。

 

ワークライフバランスのデメリット

ワークライフバランス自体にデメリットはないのですが、導入する制度においてデメリットが発生する場合があります。
デメリットを考慮しながら、どのような制度を導入すれば効果的か企業によって変わってくると思います。

 

1:仕事とプライベートのメリハリが曖昧になる

在宅勤務を導入する場合、仕事とプライベートのメリハリが曖昧になるため、従業員がうまく成果を上げられなくなるという可能性が出てきます。

人は場所におけるアンカリングが働く為、職場にいる時は仕事モードになり、家にいる時は休むモードと、気持ちのスイッチが切り替わるようになっています。

業務内容によっては、在宅で働くことで従業員の切り替えがうまくいかなくなるかもしれません。

メモ
アンカリングとは、アンカー(錨)の語源から来ており、条件付けされた感情のことを指します。心理学やマーケティングなど幅広い分野で使用されている言葉です。

 

2:大きく会社の体制を変える必要性が出てくる

こちらも導入する制度によりますが、今までと同じ会社体制ではうまく機能しなくなる可能性が出てくるため、体制自体を大きく変える必要性が出てくるかもしれません。

どんな制度を導入するかを過程した上で社内の体制を整えることで回避することができます。

 

ワークライフバランスに重点を置いている企業に転職してくる人が増えている

もともと、国がワークライフバランスに力を入れはじめた背景として少子化が引き金となったという背景があります。

少子化が進むことによって、特に中小企業は人手不足が多くなり、採用も困難になってきているという現実があります。
その為、より働きやすい環境を整えることによって企業への定着率を上げるという意図があります。

 

また、求人市場は売り手市場となっているので、転職者は企業を選ぶ選択肢が多いとも言えます。

その中でワークライフバランスに力を入れている企業は、それだけで他社と差別化することができ、より有利に転職者を受け入れることができる可能性が高いです。

 

まとめ

ワークライフバランスについて、ここまで紹介してきました。
日本では働き方改革から始まり、企業も新しい挑戦をしなければいけなることも多くなるかもしれません。

ぜひ有効的に制度を導入して、会社の成長に役立てていただきたいと思います。

 

また、下記で「仕事と生活の調和」推進サイトが発表している取り組み事例が多数あるので、最後に掲載します。

 

たった1年で離職率83%減った...

A社は5年前から新入社員向けに社員育成に力を入れています。

確かに、ある一定数の社員には育成の効果が上がっているようですが、離職率は社員育成に力を入れる前とあまり変わらず、頭を悩ませていました。
一方、B社は5年前から新入社員向けに社員教育を取り入れたら、離職率の高さがすぐに改善された上、社員全体の生産性も上がっていきました。

同じように社員育成に力を入れていたA社とB社ですが、この2社の違いは何なのでしょうか...

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事