OJTの効果的な教育法や手法、計画の流れを紹介

日本では新入社員教育はOJT教育が一般的ですが、働き方改革に伴い、効果的なOJT教育の改善に関心を寄せている企業も少なくありません。

今回はOJT教育の改善に対する効果的な教育法や手法、教育計画の流れを紹介します。

 

目次

OJTとは

OJTとはOn The Job Trainingの略で、日常業務によるトレーニング、現場で仕事を教える職業訓練法のことです。

OJTに対し、外部研修でトレーニングを行う職業訓練法をOFF-JT(Off The Job Training)と言います。

OJTの取り組みと目的

現在、OJTを導入している企業は86.9%あり、その上でOFF-JTを追加で実施している企業も3〜4社に1社程度存在します。

OJTの主な目的は、新入社員の即戦力強化による教育です。
終身雇用が当たり前だった時代は、入社した社員を徐々に会社に慣らしていきながら、ゆっくり教育することが主流でしたが、終身雇用が崩壊し、人員の出入りが頻繁になった今の時代では、どれだけ即戦力になるかが重要になりました。

こういった時代背景があるため、日本ではOJT教育が主流の社員教育法となりました。

 

OJTの手法

OJTの手法は様々なものがあり、企業によって基準も様々ですが、最も効果的な手法は第一次世界大戦中に米国で生まれた職業訓練法です。

4段階職業指導法と言われるこの手法は、多くの企業で現場教育として導入されています。

 

Show

実際に仕事をしている場面をOJTが新入社員に対してやって見せます。
先に説明に入ると、OJTは仕事の場面をイメージしながら説明していますが、新入社員はそういったイメージを持つことができません。

まずは実際にどのようにして仕事を行なっているのか、また仕事場の空気感なども感じ取ることがとても重要です。

 

Tell

仕事をやっているところを見せた上で、仕事の内容を説明します。
実際に業務に触れることで、仕事を行なう自分をイメージしながら内容を理解することができます。

特にShowとTellを逆転させないことが重要になります。

 

Do

実際に新入社員に仕事をやってもらいます。
この時、新入社員は思ったようにできないと感じることがあるかもしれません。そういった時は、OJTが励ましながら、どういった点がうまくいかなかったか、その原因を一緒に探ることが大切です。

 

Check

新入社員がやった仕事を実際に確認します。
確認によって、OJTと新入社員の見解のズレを確認できたり、改善が必要な箇所を指摘することができます。

 

4段階職業指導法を繰り返す

この4段階職業指導法を何度も繰り返して、新入社員の仕事の精度を上げていきます。
OJTが1度仕事を見せて(Show)、説明しただけ(Tell)では、新入社員は仕事を覚えられないかもしれません。

何度も繰り返し教えることが重要です。

 

OJT教育によるうまくいかない点の改善

OJT教育をしていて、教育がうまくいかないと感じている先輩社員はたくさんいます。
先輩社員が感じているOJT教育の問題点とその改善点を紹介します。

 

新入社員が打たれ弱い

最近の若手は打たれ弱いと感じている人事、先輩社員も多いと思います。
先輩社員が新入社員は打たれ弱いと感じる理由としては、世代の違いです。

世代として、今の若手は大人と関わる機会が幼い頃からそれほど多くありませんでした。
ご近所付き合いも昔と比べればそれほど多くありませんし、父親が仕事をしている姿を見る子供も断然減りました。

今の若手より上の世代は、父親が実際に仕事をしている姿を見たり、そのお客さんと触れ合ったり、ご近所付き合いでたくさんの大人と触れ合う機会があったので、社会に対する免疫を持っていました。

そのため、今の若手は社会に出ると学生から社会へのギャップを大きく感じてしまうため、心身ともにすり減ってしまい、上の世代からは”打たれ弱い”と感じさせてしまいます。

 

改善策

心身ともにすり減ってしまうのは仕方のないことなので、心のケアをしてあげることが最も重要です。
また、安心感を持たせるために仕事の失敗に対するフォローをOJTがやってあげることも重要です。

仕事の上で叱ることは良い教育法ですが、本人が落ち込んでいる時に叱る必要はありません。本人が落ち込んでいる時に叱るのは追い討ちをかけることと同じで、離職にも繋がるため、改善案を一緒に考えるという視点で接してあげましょう。

 

すぐに辞めていく

若手はすぐに辞めるというイメージを持つ人も多く、また”ゆとり世代”という言葉に惑わされることが多いのですが、実際には昭和60年代から入社3年間で辞める社員の割合はほとんど変わっていません。

確かに求人市場は売り手市場のため、転職しやすい環境でもありますが、それと同時に若手社員は入社した会社をすぐに辞めると、親にどう思われるかという罪悪感を抱えてなかなか辞められないと悩みを抱えている人も多いです。
ですから、実際はすぐに辞めるかどうかは世代関係なく、人によります。
改善策
すぐに辞める社員は、採用の時点でふるいに落とす必要があります。
いくら人手不足と言っても、長期的に働けるかという点においては、確認が必要です。
またOJTとの相性との関係もあり、新入社員は先輩社員を通して会社を見るので、会社に幻滅すると辞めてしまうケースは珍しくありません。
相性の良いOJT教育を行う先輩を担当させましょう。

マイペースすぎる

新入社員を見てマイペースだと感じる先輩社員も多いです。
特に新卒は、学生の時のペースで社会に出るので、そのペースのギャップは大きいです。

環境が変化する際は大きなストレスを感じますし、新入社員もペースを上げるにもどのように上げていいかわからないものです。

また、会社によってそのペース感も違うため、流れを掴むまでは時間がかかります。

 

改善策

OJT教育では、新入社員に対して、すべての業務に期限を設けてください。
期限を切ることで、新入社員がペースを掴みやすくなります。

ただ、先輩社員と同じペース感を要求しないようにしましょう。そのペース感では仕事に慣れにくいはずです。

OJT教育もPDCAサイクルを回しながら、どのように教育することが会社にとっても新入社員にとっても適切であるか模索しなければいけません。

 

自分から行動しない

学生時代は受け身であることが多いので、社会に出てからどのように自発的に行動に起こして良いかわからないのが若手世代です。

重要な点は、若手は決して自分から行動したくないわけではないということです。
どこまで行動して良いのかわからないというのが実情です。

なぜなら、下手に自発的に行動を起こして怒られることを恐れているからです。

 

改善策

まずは、失敗しても良いという前提でOJT教育の際に何でもやらせてあげることが大切です。
新入社員には早いと思われる仕事でも、先輩社員が付きながら難しい業務に触れることで、新入社員の自分なりの行動範囲がわかってきます。

この行動範囲を理解することで、自発的な行動を促すことができますし、その挑戦自体を評価することで主体性を発揮できるようになります。

 

指摘されたことを聞いておらず、同じことを繰り返し説明しなければいけない

人はインプットの方法が3種類あると言われています。
聞いて覚えることが得意な人、見て覚えることが得意な人、やって覚えることが得意な人の3種類です。
この3種類の感覚を心理学用語でVAK(Visual、Auditory、Kinesthetic)と言います。

OJT教育をする先輩社員が”聞いて覚えることが得意な人”だとして、新入社員が”やって覚えることが得意な人”の場合、優位感覚にズレが生じるので、先輩社員は教えたことにフラストレーションを感じるかもしれません。

また、新入社員は一生懸命仕事をしているのに怒られるという点において、モチベーションダウンに繋がる可能性もあります。

 

改善策

OJT教育では、このVAKすべてに訴える教育をすることが大切です。
つまり、「見せる、聞かせる、やらせる」です。

若手社員のインプットがしやすくなり、仕事を早く覚えれば会社としても早く利益に繋げることができます。

また、若手社員の中には仕事の覚え方自体もわからない社員もいます。
メモの取り方、仕事のアウトプットの仕方、PDCAのやり方など、こういったことは新入社員の今までどんな仕事をやってきたかの背景が大きく関係するので、手取り足取り教えてあげる必要があります。

 

OJT教育の計画

OJT教育には計画が必要です。
そうでなければ、先輩社員が新入社員をどのように教育して良いかわからないからです。

OJT教育の計画の基本形を紹介します。

 

1、教育における目標設定

新入社員に対して、会社はどんな人物像になってほしいかという目標を設定する必要があります。
この目標をOJT教育をする先輩社員と共有することで、教育に一貫性が生まれます。

また、若手、中堅、役職などにおいても、会社によってそれぞれのポジションがあるはずですから、そのポジションに合った教育を行う必要があります。

 

教育担当者の選出

教育担当者の選出は、教育ができるにふさわしい人物や、仕事の稼働が適切な人物となります。
特に、OJT教育は先輩社員が自分の仕事を行いながら教育を行うので、先輩社員の稼働を調整しないままOJT教育を行うと、結局何も教育できないということになりかねません。

また、OJTと新入社員の相性も重要なポイントとなります。
新入社員が優秀でOJT教育社員がそれほど優秀でない場合、先輩社員が新入社員を潰すケースということはよくあります。

人事担当とよく話し合いながら、教育担当者を選出する必要があります。

 

育成計画の立案

育成計画の立案は、ある程度の計画性を持って行う必要があり、その計画を新入社員にも共有する必要があります。
なぜなら、具体的なステップが見えてないと社員は将来に不安を感じるからです。

急に現場に放り出されるのではないか、誰を頼っていいかわからないなど、そういった不安があるとモチベーションダウンに繋がります。

計画は業務内容によってステップ分けをする必要がありますが、新入社員にとってクリアしやすいステップをいくつも用意する必要があります。

 

育成計画の実行

実際に育成計画を実行して、育成計画がOJTと新入社員にとってうまく機能するかをチェックします。
うまく機能すれば、そのまま続けて問題ありませんし、不都合が発生する場合は計画を見直さなければいけません。

また、OJTは制度に近いとは言えど、相手は人です。
人によって多少計画を変える必要性は出てくる可能性があります。

 

個別面談で改善する

計画を行動に移して試したら、個別面談でフィードバックを得ます。
個別面談はOJTを行なっている先輩社員と新入社員どちらも対象です。

この際に、教育に関してお互いに不満が出るようでしたら改善しなければいけません。

 

まとめ

日本の多くの企業がOJT教育に依存している分、OJT教育には力を入れるべきだと感じています。
なぜなら、OJT教育を改善するだけで社員の生産性も上がり、離職防止にも繋がるからです。

良い教育を行うことで、定着率が高まる企業が増えてほしいと思っています。

 

たった1年で離職率83%減った...

A社は5年前から新入社員向けに社員育成に力を入れています。

確かに、ある一定数の社員には育成の効果が上がっているようですが、離職率は社員育成に力を入れる前とあまり変わらず、頭を悩ませていました。
一方、B社は5年前から新入社員向けに社員教育を取り入れたら、離職率の高さがすぐに改善された上、社員全体の生産性も上がっていきました。

同じように社員育成に力を入れていたA社とB社ですが、この2社の違いは何なのでしょうか...

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