
「コーチングって、具体的に何を話すところなの?」 そんな疑問をお持ちの方へ
あるセッションの様子をダイジェストでお届けします。
その変化のプロセスを、ぜひ感じてみてください。
-
お相手について:詳細な属性は伏せ、個人が特定されないよう配慮しております。
-
守秘義務について:私はプロとして守秘義務を厳守しています。実際のセッションに基づきつつ、事例として公開できるよう、内容や表現を適切に編集・再構成したものです。
クライアント様にも許可をいただいております。 -
構成について:本来のセッションはもっと時間をかけて行われますが、読みやすいように短くエッセンスを抽出しています。
※最初にお断りしておきます。
この記事で紹介する対話は、一般的な「優しいコーチング」を求めている方には、非常に不快で、冷徹に感じるかもしれません。
しかし、日々孤独な決断を下し、周囲に弱音を吐けず、正論という名の鎧で自分を守り続けてきた「経営者」という生き方をしている方にとっては、読み応えのある内容になると思います。

皆川さん、今日もよろしくお願いします。
いやぁ、今日も朝からバタバタで……。
あ、前回の体験セッションのあとに考えたんですけど、やっぱり自分一人の思考の壁を感じるんですよね。
今の会社の数字を伸ばす方法はわかるんです。
でも、最初にお伝えした通り、もっと自分の知らない自分というか、人生観を揺さぶられるような『新しい視点』が欲しいんです。
今日は何か、僕がハッとするような、自分では辿り着けないような視点を提示してもらえますか?

こちらこそ、今日もよろしくお願いしますね。
なるほど。
私だと何が視点の中で何が視点の外かわからないので、視点の外にあるものの定義を教えていただけますか?

視点の外にあるものの、定義、ですか...。
(腕組みをして、しばらく考えられながら)

うーん、そうですね……。
僕が普段考えている『売上をどう作るか』とか『組織をどう動かすか』っていう論理の延長線上にはないもの、でしょうか。
自分一人で自問自答していても、結局は過去の経験の焼き直しみたいな答えしか出てこないんです。
だから、自分では絶対に選ばないような言葉だったり、僕が盲点になっている「弱さ」とか「本当の望み」とか……。
そういう、自分では直視できていない、あるいは気づけていない領域のこと、ですかね。

気づきはコーチが与えてくれるものだと思っていませんか?
私は何が社長の気付きに繋がるのかわかりません
私が気付きを与えるのではなく、社長が勝手に気づくんですよ。
今の社長はただ受け身で「俺に気付きを与えてくれよ」という姿勢に感じてしまうのですが、どう感じますか?
(少し不快感を感じられたご様子で)

なるほど。
僕が受け身、ですか。
いや、まあ……そう見えているんでしょうね。
今、自分では『どうすればいいか』を議論したいつもりだったけど
言われてみると、確かにどこかで『皆川さんなら何かヒントをくれるはずだ』と。
無意識に預けていた部分は、否定できないな。
ただ、そうなると……。
僕がここで、僕自身の言葉で何を見つけなきゃいけないのか。
そこを今、改めて突きつけられた感じがしますね。

コーチの仕事は、答えを与えることではなく、クライアント様の中にある答えを引き出すお手伝いをすることです。
気付きが起こるかどうかは、社長が自分の人生の主導権を握るというコミットメントができている状態なら機能しますよ。
(少しため息をついて、姿勢を正されながら)

参ったな。 完全に一本取られた気分です。
確かに、今の僕は『人生の主導権』を皆川さんに渡そうとしていましたね。
『経営者がそんなことでどうするんだ』って自分でも思うはずなのに、こと自分の人生観や幸福なんて話になると、急に誰かに正解を教えてほしくなる……。
(少し表情が引き締まったご様子で)

その言葉を聞いて、今ようやく目が覚めた気がします。
僕が欲しかった『自分にない発想』っていうのは、誰かに与えられる刺激じゃなくて、僕自身が逃げずに自分を掘り下げた結果、絞り出されるもののことだったんですね。
……分かりました。 自分の人生に対して、もう一度僕自身がハンドルを握るとコミットします。
皆川さん。
僕、さっきまで『今の会社をどう成長させるか』っていう理屈ばかり話していましたけど、実は心のどこかで『このまま数字を追いかけ続けて、何が残るんだ?』っていう、すごく空虚な感覚があるんです。
この『空虚さ』の正体、逃げずに掘ってみたい。
ここについてコーチングしてもらえますか?

空虚さはどこから来ていると感じるんですか?

どこから...?
……多分、今の会社の数字が『僕の喜び』じゃなくて、単なる『防衛策』になっているからだと思います。
売上が上がれば安心するし、社員に給料も払える。
周りからも成功者だと言われる。
でも、それは『負けないためのゲーム』を必死にプレイしているだけで、僕の心が本当に震えるような『これがやりたかったんだ!』っていう実感とは、どんどん乖離していっている。
その乖離した隙間に、冷たい風が吹いているような……そんな感覚が『空虚さ』なのかもしれません。
……いや、今話しながら気づいたんですけど。 僕は『自分にない発想の先の視点』を求めていたんじゃなくて、『自分の中にすでにある、この冷たい空虚さ』から目を逸らすための『正解』が欲しかっただけなのかもしれない。
「何か新しい視点を提示してほしい」
一見、向上心に溢れたこの言葉の裏側に、実は「自分の人生のハンドルを誰かに預けたい」という依存心が隠れていました。
多くの経営者は、日々「正解」を出すことを求められます。
しかし、いつの間にかその正解探しが、自分自身の内面にある『空虚さ』や『冷たい風』から目を逸らすための道具になってしまうことがあります。
今回のセッションで彼が気づいたのは、外側に新しい答えを求めることの無意味さでした。
自分の中にある空虚さを直視し、そこから逃げずにハンドルを握り直す。
その覚悟が決まった瞬間、対話の質はビジネスの相談から「人生の主導権を取り戻すコーチング」へと変わりました。
あなたは今、何から目を逸らすために「正解」を探していますか?









